本を読む人、歩く人

路地を歩いたときの写真、そして読んでいる本のこと

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ブックカフェ、幸福な出会い

bookcafe.jpg


クリーニング屋にお気に入りの黒いシャツを受け取りにいった帰り道、先日出来たばかりの不忍通り沿いのブックカフェに入った。
カフェと古本屋が一体になったような形式、「おひとりさまから、ごゆっくりどうぞ」と外に看板が立っている。

中に入って、コロナを頼んでから、本棚をのんびりと覗いた。
品揃えにびっくり。ギンスブルグ、ボルヘス、タブッキ、チェーホフ、
ル・クレジオ、ジャン・ジュネ、翻訳本がたくさん揃っていて、
本棚ごと持って帰りたい品揃えだった。
「この本は売り物なのですか?」と聞くと「そうですが、どうぞご自由に読んでください」と言う。

 寺山修司の「時には母のない子のように」という作品集を最初に手に取った。余談だが、「時には母のない子のように」という、カルメン・マキが歌って有名になった歌を、子どもの頃、父がギターを弾きながら歌うのを私は聴いて育った。聴いて育ったといっても単身赴任だった父が帰ってくるのは週末ぐらいで、でも帰ってくるたびに「あの歌を歌って」とせがんでいた気がする。考えてみると、それがはじめての寺山修司との出会いなのだった。

「寺山修司青春作品集5」にあたる、この本は童話が集められた作品集らしい。最初にある四つの愛の物語を読んだ。お月さまを瓶詰めにして大切にとっておく花売りの少女の話、涙を風船のようにふくらませて飛行船にした少女の話、どんな壁も青空に塗り変えることのできる男の話、どれもとってもせつなくて美しくて読みながら、ちょっと涙ぐみ、思わず、くすっと笑ったりしてしまった。

 余りに、素敵な本なので、その本は買うことにして、今度はタブッキの作品のなかでまだ読んでいなかった「レクイエム」という作品を読んでみることにした。現実を生きているんだかどうかわからなくなってしまったイタリア人の男が、死んでしまったポルトガル人の作家に会いにいく物語だ。引き込まれて、読んでいると、さっきまでJAZZが流れていた筈ががいつのまにかトム・ウェイツになっていた。Assylum Yearsというとても好きなアルバムだ。なんだかその偶然がとても嬉しかった。

 「レクイエム」もとてもいい本だが、続きはまた店に行ったときの楽しみにとっておくことにした。私が店を出る直前に入ってきたお兄さんは、店に入ると迷わずスタンダールの「赤と黒」を本棚に取りにいっていたから、やはり読みかけのまま置いてあったのかもしれない。続きを読みにいく楽しみがあるという、ブックカフェもいいなあと思う。

 結局、寺山修司の「時には母のない子のように」と、先月図書館から借りて付箋だらけになった、ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」の文庫版を買って帰ってきた。

 いい本にいい形で出会うと、素敵な人と出会ったのと同じくらい嬉しい。

 もうすぐ、引っ越すというときになってああいう店が出来るんだなあ。引っ越すまでまだ数週間あるので、珠玉のような時間を過ごしに何度か店を訪れようと思う。近くの図書館がちょうど移転作業中のため閉館なことだし。
 

  1. 2006/03/18(土) 22:16:42|
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プロフィール

岩井さやか

Author:岩井さやか
役者です。血液型はO型です。
報道記者をしていたこともあります。

路地を歩くこと、出会うこと、
本を読むことが好きです。

好きな映画は「ノーバディーズ・フール」
好きな作家は須賀敦子、フェルナンド・ペソア


【今後の予定】

勝田演劇事務所公演 「九つの不気味な物語」
10月18日〜22日 @ザムザ阿佐ヶ谷 

(構成・脚色・演出)勝田安彦
(出演)中原和宏、磯貝誠、中島忍、原昇、
    早川真知、勝田安彦
    吉村恵美子、水野ゆふ、岩井さやか 
    出沼朋美、増本絵美
 〈楽士〉小路健介、麻生麦


【日程】
10月18日(水)19:00〜
10月19日(木)19:00〜
10月20日(金)19:00〜
10月21日(土)14:00〜 / 19:00〜
10月22日(日)14:00〜

【チケット料金】
一般 3,500円 / 学生 2,500円(学生証をご提示下さい)
日時指定・全席自由。

【予約・問い合せ】
勝田演劇事務所 042-576-2787

 

【これまでの主な出演作】
(舞台)
流山児★事務所 「青ひげ公の城」
流山児★事務所「鼠小僧次郎吉」
龍昇企画「続・ああ無情」
龍昇企画「行人」
見学者「雲の溜まる休日2006」
芝居屋羊のしっぽ「寺山修司という世界」

(自主映画)
九鬼正範監督「小谷さん家のペコちゃん」
 横浜映像天国2006グランプリ受賞作品
小谷さん家のペコちゃんホームページ

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